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yoshitanikazuhiro

「第1回 青い車系ロック」

更新日:2022年9月20日

 夏の終わり、海岸線を歩く。

 もう、まとわりつくような暑さはなく、風は乾いている。

 僕はどこに向かおうとしているのだろう?

 ふと見上げると、筋状の雲と青い空が広がっていた。


 そんな瞬間に、ピッタリ来る曲は一体なんだろう?

 スピッツの「青い車」、ブランキ―ジェットシティの「青い花」、くるりの「ロックンロール」、思い立つのは歳のせいか九十年代の曲ばかり。

 ここはひとつ、ロックとお浜に最新の青い車系ロックを教えてもらおうかな。


「ロックとお浜の!最新の音楽情勢が見えて来る!第1回『青い車系ロック!』」


お浜「記念すべき一回目は『青い車系ロック』ということで、ロックさんよろしくお願いします」

ロック「よろしゅう頼んまっさ。お浜はんは音楽に詳しいねんてな」

お浜「月千円でiTunesのアップルミュージックに加入すれば、6千5百万もの曲をダウンロードし放題ですからね。今年からですが、ミュージックマガジンで紹介されてる新譜を全部聞いて、良いと思った物は全部ダウンロードしてます。これまでも割と音楽詳しいつもりでしたが、知れば知るほど『俺って音楽なんにも知らんかったんやな――』って感じになってます(笑)」

ロック「音楽は何で聴いてまんの?パソコンでっか?」

お浜「アイポッドタッチです。去年256ギガの大容量のが出てるのを見つけて買い換えました。なんせ量が膨大ですんで」

ロック「アップルミュージックでダウンロードした曲って、そのままアイポッドタッチに入れれるんでっか?」

お浜「いや、1回ファイルに置き換えないといけません。『note burner itunes drm audio converter』いう変換アプリがあって、それを利用しています」

ロック「なんかよう分からんけど、えらい時代になってまんな。CD屋とかいらんやん」

お浜「いりませんね(笑)。iTunesも、俺に向けた音楽を教えてくれますしね。これまでは、大阪の電気屋街にあるK2レコードっていう品揃えが豊富なCDレンタルショップに半年に1回は行って30枚程のCDを借りてたんですけど、行かなくなったら去年潰れてました」

ロック「時代の流れちゅう奴でんなぁ」

お浜「そうですね。便利で手軽になりましたけど、K2レコードが潰れたと知った時は寂しく感じましたね」

ロック「この世のすべての物は常に変化し続けて行く、諸行無常ちゅうやつでんなぁ。じゃあ、ぼちぼち第一回のテーマ『青い車系ロック』に行きまひょか」

お浜「そうですね。ロックさんは『青い車系ロック』と聞いて、何の曲を思い浮かべますか?」

ロック「ベタでっけど、ガリレオガリレイの『夏色』とか、スキマスイッチの『全力少年』でんな」

お浜「なるほど、どちらも夏の切なさを感じる良い曲ですね。ただどちらも、夏の始まりという気がして、『青い車系ロック』とは言えませんね。『青い車系ロック』は、風が乾いた夏の終わりでなくてはなりません」

ロック「なんや、こだわりがあって厳しいでんな。ガリレオガリレイの『夏色』なんか、『夏の終わりに』って歌詞ありまんねんで?」

お浜「ガリレオガリレイが『夏の終わり』と歌おうとも、あの曲は絶対に夏の始まりです」

ロック「勝手なやっちゃな~」

お浜「すいません(笑)。すべては俺の独断の感覚の上に成り立っています故(笑)」


「青い車系ロック」

1.ことば/えんぷてい

2.fry me to the mars/ミツメ

3.夏休みはもう終わりかい/the band apart

4.ブレーキ痕/徳永憲

5.ファンファーレ/トレモノ

6.けやき通り/グソクムズ

7.茗荷谷/家主

8.to dream/say sue me

9.vision/おとぎ話

10.若者のすべて/フジファブリック


1.ことば/えんぷてい

お浜「えんぷていは名古屋を中心に2020年6月から活動しているスリーピースバンドです」

ロック「写真見たけど、めっちゃ若そうでんな」

お浜「多分、二十代前半でしょう。音楽は夢見心地で切なくて、『青い車系ロック』の代表格です。この曲は5月に発売された5曲入りのep「hira sessions」からですが、1曲目の「眠らないで」も十分『青い車系ロック』で通用します」

ロック「まるっきり『ライ麦でつかまえて』でんな~!ロックをライ麦畑で捕まえて~!きゃ~!」

お浜「急にどうしたんですか?」


2.fry me to the mars/ミツメ

お浜「ミツメは2009年から東京で活動している4人組のバンドです」

ロック「いかにも音楽好きって感じの若者でんな。この斎藤工みたいなんがボーカルでっか?」

お浜「いや、ギターですね」

ロック「なんや、ギターかいな――」

お浜「ギターだったら駄目なんですか(笑)?この曲は8月に発売された7作目『mitume live recording』の収録曲ですが、その題名通り公開レコーディングされたみたいですよ」

ロック「公開レコーディング?なんでんねんな、それ?」

お浜「観客に鍵盤や管楽器を重ねる作業を見せながら作ったアルバムだそうです」

ロック「おもろいこと考えまんな。斎藤工の企みかいな?」

お浜「さすがにそこまでは知りませんが、このベストアルバム的アルバムは、なかなかライブ特有のロック的グルーブ感がありますよ」

ロック「ところで、この曲のタイトルの『fry me to the mars』って、ジャズのスタンダード『fry me to the moon』を意識しとんのかいな?」

お浜「どうでしょう?曲調は似てませんが、意識はしてるでしょうね」

ロック「斎藤工の仕業かいな?」

お浜「知りません(笑)」


3.夏休みはもう終わりかい/the band apart

お浜「the band apartは1998年に結成された4人組のバンドですが、エッジの効いたロック的グルーブがカッコいいバンドです」

ロック「なんか、洒落た感じの曲やな」

お浜「曲調はAORとかソウルっぽい感じの曲が多いですが、ボサノバからメタルまでいろいろ要素が曲に詰め込まれています。この曲は、7月に発売された9枚目のフルアルバム『ninja of four』の冒頭を飾るナンバーで、その名の通り切なくて良い曲です」

ロック「最後は、えらいプログレッシブな展開になりまんねんな」

お浜「その辺が、このバンドの真骨頂ではないでしょうか」


4.ブレーキ痕/徳永憲

お浜「徳永憲は現在五十一歳で、1998年のソロデビューから息の長い活動をしていす。ギターポップに寄ったり、サイケデリックな弾き語りに寄ったりしてますが、今年3月に12枚目になるフルアルバム『今バリアしてたもん』を発表しました。今回の曲は2006年に発売されたアルバム『スワン』からになります。『青い車』というより『黒いナナハン』みたいなこの曲をここに入れたのは、the band apartが最後でプログレッシブな展開になったからです」

ロック「早速テーマからブレてまんな」

お浜「サビはポップで「青い車」ぽいから許して下さい’笑)。プレイリストには流れがあり、こういう寄り道もあるんです」

ロック「全部お浜のさじ加減一つやさかい、僕はなんも言えんけども」

お浜「(笑)」

ロック「この歌詞、おもろいでんな」

お浜「なにしろ、新譜のアルバムタイトルが『今バリアしてたもん』ですからね。俺が新譜の中で一番好きな曲は『肘鉄』ですが、『君の~♪肘鉄を食らい~た~い~♪あああああ~あ~♪』なんて、歌詞も含めて完全にアシッドフォークですね」

ロック「ビートルズの『ブラックバード』を彷彿させるようなええ曲でんな――ってちゃいまっか?」

お浜「ちゃうことはないです。十分『ブラックバード』ぽいです(笑)」


5.ファンファーレ/トレモノ

お浜「トレモノは石垣島出身の4人組のバンドで、2009年東京で結成されています」

ロック「まさしく、夏の海辺で会いましょう的な曲でんな」

お浜「夏にピッタシですね。この曲は2017年に発売されたファーストアルバムからの1曲になりますが、2015年兵庫県三田市で行われた『one music camp』で見たのを思い出します。トレモノ自体が凄く楽しそうでしたが、あれは最高でしたね。場所は山でしたが(笑)」

ロック「僕も行ったけど、あれは楽しかったな。ところで『one music camp』って言えばpredawn(プリドーンは1986年生まれ清水美和子によるソロプロジェクト)でんな。rokko sun musicちゅう六甲山のフェスでもそやったけど、僕が行くフェスになんか知らんけどいっつも出てまんねん。静かな女の人が静かな弾き語りをしてるって感じやったから全然見とらんかったんやけども、今年発売されたサードアルバム(『the gaze』)は聞いて度肝抜かれたわ。1曲目、まるでビートルズの『ストベリーフィールズフォーエヴァ』でんねんもん」

お浜「『new life』ですね。4月に発売された『the gaze』は僕も驚きました」

ロック「まさかあの静かな人が、あんなええアルバム出すなんて夢にも思ってもなかったもんなぁ」

お浜「それだけに、元andymoriの小山田壮平と結婚して、活動を休止するのは残念ですね」

ロック「多分、小山田君に脱法ハーブもろたから、あんな物凄い曲が書けたんでっしゃろな」

※小山田壮平の脱法ハーブ騒動 。2012年11月1日、東京・渋谷区のホテルで暴れて救急車で搬送された。

お浜「怒られますよ」

ロック「誰に?こんな文章、誰も読んどらんで」

お浜「確かに(笑)」


6.けやき通り/グソクムズ

お浜「グソクムズは、2014年辺りから吉祥寺を中心に活動を開始した『ネオ風街』と称される4人組バンドです。聴けばすぐ分かりますが、はっぴいえんどなどのフォークはもちろんのこと、シュガーベイブなどのシティポップからも色濃く影響を受けているようです」

ロック「この曲は、『青い車系ロック』っちゅうんがなんか分かりまんな」

お浜「お。ついにロックさんも『青い車系ロック』の心髄を捉えましたか(笑)」

ロック「まあな――って、何の得もしまへんけど」

お浜「この曲は、今年8月に発売されたセカンドフルアルバム『グソクムズカン』のからのナンバーですが、元々2020年に連続で出していたシングル群の1曲になります。その中でもシングル『街に溶けて』は本当に衝撃でした。ここ2年で聴いた中で、確実にベスト10に入る名曲です」

ロック「『new life』もな」

お浜「えらい押しますね。別にそれでかまいませんが(笑)」


7.茗荷谷/家主

お浜「家主はバブル経済末期、沖縄県にて産声を上げたバンドで、2017年に本格的に活動を始めた4人組です。フォークぽいロックですが、とにかくメロディがエモーショナルで素晴らしいですね」

ロック「どこか懐かしい感じがするええ曲でんな。淡々としとるようで、サビでエモーショナルになるとこがええでんな」

お浜「去年12月、セカンドフルアルバム『doom』が発売され、それも凄い良かったんですが、この曲は2020年に発売されたファーストフルアルバム『生活の礎』から選曲しました。『doom』には、結構ハードな曲もあります」

ロック「最近新譜を出したウィーザーとか、ギターポップからの影響も感じまんな」


8.to dream/say sue me

お浜「say sue meは韓国は釜山出身の4人組のバンドです。2014年にファーストフルアルバムを出し、今年5月に4年ぶりとなるサードフルアルバム『The Last Thing Left』を発表しました。この曲もそこからの選曲になります」

ロック「なんか、今年のフジロックに来る予定がキャンセルになってんてな」

お浜「みたいですね。俺がフジロックに行ってたら、結構落ち込んでたでしょうね」

ロック「なんか切なくてかわいい曲でんな」

お浜「はい。俺なんかは、パステルズを思い出しますね。他の曲も爽やかで軽快でメロディアスで、青春のたまらない感じがあります」

ロック「ロックをライ麦畑で捕まえて~!きゃ~!」

お浜「なんなんですか、それは?」


9.vision/おとぎ話

お浜「おとぎ話は2007年にデビューした4人組のロックグループです。2007年のファーストアルバムにはハードなパンクっぽい曲も多かったんですが、基本的にはサニーデイサービスに通じるようなフォークぽい懐かしい感じのロックが魅力でした。その点は家主にも通じます。今年6月に発売になった12枚目のフルアルバムでは、ソウルやシティポップっぽい雰囲気が存分にまぶされた感じになっており、パンクぽい曲は無くなってました」

ロック「この曲もしっとりした落ち着いた曲でんな」

お浜「すっかり大人になって円熟味が増したというか、メロディアスなのはそのままに音楽に幅が広がった感じです」

ロック「夕日の沈むライ麦畑は、思い出の中って感じでんな」

お浜「ライ麦畑好きですね(笑)」


10.若者のすべて/フジファブリック

お浜「2009年12月、この曲が発売された2年後にこの曲を作った志村正彦が亡くなるわけですが、間違いなく『青い車系ロック』の最高峰です。くるりみたいな曲ですが、この人ほど夏の終わりの切なさを見事に表現してる人はいないんじゃないんでしょうか?大トリを締めくくるのはこの曲しかありません」

ロック「『最後の~♪花火に~♪今年も~♪なったな~♪』グッと来まんな」

お浜「でしょ。夏のフィナーレに、今夜夜空に花火を思い浮かべて、この曲を口ずさんでみて下さい」




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